- 作者: 小川洋子,河合隼雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08
- メディア: 単行本
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・・・で、もやもやと感じていた部分。
「癒す」とは、本当に「真実の中の真実」を本人から暴き出すことなのか・・・。
そのとき持った違和感が、本書を再読したとき、ようやくわかった気がした。
少年にとって、カウンセラー的役目であるイチイの木は、「怪物」に姿を変えなければならなかった。西洋的近代的な考え方が根幹にあれば、それが正しい「癒し方」だった。
しかしもし、河合隼雄さんがイチイの木(カウンセラー)だったら、ただだまって、そこに立っているだけなのだろう。少年が木をかき抱き、物語を自ら語り始めるまで、じっと耳を澄ますだけだったろう。木は、傷ついた少年の声にならない魂の物語を受け止め、地球にもどす。大きなアース線のように。
故・佐野洋子さんがエッセイで河合先生のことを『おひさまにあててぽかぽかふくらんだ座布団のよう』と表現されたらしいが(お二方とも天国で楽しい対談をされているに違いない)『怪物』と『ぽかぽかふくらんだ座布団』・・・言いえて妙ではないか。
小川「矛盾との折り合いのつけ方にこそ、その人の個性が発揮される」
河合「そしてその時には自然科学じゃなくて物語だとしかいいようがない」
小川「そこで個人を支えるのが物語なのですね」