うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 物語ること、生きること

物語ること、生きること

物語ること、生きること

数年前の講演会のこと思い出しました。ふんわり人を包み込むような温厚なお人柄の中に、一本きりっと筋の通った理念を持った方だと、そのとき感じたのでした。本書はその上橋菜穂子さんに瀧晴巳氏がインタビューし、それを構成・文章に起こしたものです。
インタビューされたものなので、上橋さんの率直な気持ちが、自らの作品の引用も交え、紙面からあふれ出てくるようでした。これがもし、ご自身で書かれたものであれば、これほど心のうちまでを広げて見せることは、できなかったことでしょう。
話されていくうちに、ご自身も今までの作家としての、そして文化人類学者としての両輪の道を改めて発見、見直されたのではないでしょうか。
上橋ファンのみならず、作家を志す若い人たちの(あるいは、見果てぬ夢を心の内に秘めた人たちの)道標になるような素敵な言葉とエピソードの詰まった一冊でした。
最後のブックリストに共通の本を見出し、思わずほおを緩ませてしまい、またタイトルは知っていても未読の本、まったく未知の本など、今後の読書にも役立てたいと思いました。なかでもルーシー・M・ボストンさんの『グリーン・ノウ』シリーズは、ぜひ読んでみたいです。

作家になりたいと告白した上橋さん(当時17歳)に対してのボストン夫人の言葉。

「なれますよ<中略>大人になって、いろいろなことがあっても、あなたがその夢を強く持ち続けているのなら、あなたはきっと作家になれます」
「恵まれた家庭の普通の主婦だった彼女が、『グリーン・ノウシリーズ』で作家デビューしたのは。六十二歳のときでした」(本文より)