うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

[ファンタジー・国内] しばしとどめん北斎羽衣

しばしとどめん北斎羽衣

しばしとどめん北斎羽衣

花形みつる氏の魅力は、パンパンと、打ち出される歯切れの良い文体だ。
それは、江戸前の落語の語りにも似て、この物語の要となっている。
荒唐無稽な設定だが、豊かな表現とすぐれた取材、
あわせて筆者の博識の深さが土台にあるから、ちっとも嘘っぽくない。
日本画の鬼才・葛飾北斎を、ご近所にいそうな、ちょっと気難しいおじいさんに仕立て上げ、語り手の主人公「ボク」とのからみで笑わせる。
最後は、切なくなるような場面をぐっと押さえて、余韻すら漂わせる。
上手い! と思う。