うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 天山の巫女ソニン 一、二、三 

天山の巫女ソニン(3) 朱烏の星

天山の巫女ソニン(3) 朱烏の星

☆2008/05/018

シリーズ三作目。今回の舞台は巨山(こざん)。主人公のソニンは、<森の民>を救うため、特使しとして北の国に旅立つイウォル王子と行動を共にする。
半島の三国、森に住む民、夢見の才など、ファンタジーらしい設定ではあるけれど、中身はリアリズムに近く、現世界にリンクするところもある。エンタテイメント系ファンタジーと一線を臥す、異色なテイストを持ったファンタジーだ。
評価は過去の二作とも三ツ星であったにもかかわらず、次を読みたくなってしまうという不思議な魅力のある本。
この三作目でようやく、作者が描こうとしているテーマが輪郭を持って浮かび上がってきたような気がする。児童向けファンタジーにはめずらしい、政治的な駆け引きや判断を、物語の中心に持ってきているという点。これは、上橋菜穂子さんの『守り人シリーズ』に共通するものとして、目に新しい。
今後の展開に、注目したいと思った。


天山の巫女ソニン 2 海の孔雀

天山の巫女ソニン 2 海の孔雀

☆2007/04/27 (再掲載)

不思議なファンタジーだ。魔法も呪術も派手な立ち回りもないのに、最後まで読ませてくれる。主人公はソニンという、巫女になりそこなった少女。どこにでもいそうな、ごく普通の少女だ。今回は隣国の政治や陰謀に巻き込まれ、自分の大切なひとびとを、知恵と行動力で守ろうとする。ただ淡々と。
作者は善も悪もなく、登場人物を冷静な目で分析する。それはソニンの視点でも伝わってくる。自分で自分のことを、決められるようになったソニン。次巻はどのような成長を見せてくれるか楽しみだ。


天山の巫女ソニン 1 黄金の燕

天山の巫女ソニン 1 黄金の燕


☆2006/08/06  (再掲載)

『生後まもなく、巫女に見込まれ天山につれていかれたソニンは、十二年間の修行の後、素質がないと里に帰される<中略>三つの国を舞台に、運命に翻弄されつつも明るく誠実に生きる、落ちこぼれの巫女ソニンの物語』

(表紙巻頭文より)

アニメ『少女チャングムの夢』、アンデルセン童話の『白鳥の王子』など、ストーリーも雰囲気も異なるが、読んでいていろいろなモチーフが浮かんだ。
丁寧で素直な文体。勇気と誠実さを兼ね備えたヒロインらしいヒロイン。そして魅力的な登場人物たち。後半のまとめ方は少々、平板だったが、続編に期待を持たせる伏線が上手く張られている。
これからが、とても楽しみな作家さんだと思った。それと、本のイラストが、可愛らしくて♪ 気に入った。