うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 獣の奏者〜 闘蛇編・王獣編〜

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

「決して人に馴れぬ孤高の獣に向かって、竪琴を奏でる娘」
そのワンシーンだけで、四ヶ月1200枚の物語を書き上げてしまったという。<単行本あとがき><飛び越えていく物語・文庫本あとがき>を読んで驚愕してしまった。
上橋菜穂子さんは、綿密にプロットを立て、精密機械を組み立てていくように小説を書かれる方だと、想像していたからだ。三年前、講演会に出向いたとき、『精霊の守り人』執筆のきっかけが、このインスピレーションであったとおっしゃっていたことを思い出した。プロの作家さんですら稀有な、生まれながらのストリーテラーなのだと思った。
もちろん、土台に人類学者としての知識と経験があるからこそ、リアリティあるファンタジー世界が構築できるのだ。ファンタジーを単なる夢物語とはせず、地に足をつけた実際的な生活を表現することによって、政治をも絡ませた社会派といっていいストーリーが展開される。テーマは一貫して『生命』と『ヒューマニズム』だと思う。
これから、完結編までの二冊と最近出版さた『刹那』まで、いっきに読めないのが辛い。