うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 腹心の友たちへ

赤毛のアン』翻訳者である村岡花子さんのエッセイ集。エッセイは52編におよぶ。おもに1960年代、1940年代のエッセイが収録されている。
翻訳家、母親、祖母、ラジオのパーソナリティetc.いくつもの顔をお持ちだった村岡さん。その知性と行動力は、60年たった現代の女性と比べても隔たりを感じない。
面白かったのは、その先進的な村岡花子さんでさえ、当時の若い人たちの行状や言葉使いを憂いていることだ。
当時の若者たちは現代、すでに著者と同じ年齢に達している。彼らも今では村岡花子さんと同じように現在の若者を憂いているのに違いない。いつの時代も若者は年配者にとって未知の新人類なのだろう。
一番、心に残ったエッセイは、亡くなられる10日前に書かれたという『大阪の日』だ。村岡花子さんの母として、祖母としての人間味溢れる愛情とやさしさが伝わってくる作品だった。
花子さんの娘さん、みどりさんの『あとがき』と、その15年後に書かれた『母の思い出』も印象深かった。みどりさんは1994年、62歳の若さで亡くなられていたということを初めて知った。
お二人の『曲がり角の先』は、孫の恵理さんに着実に引き継がれ、2014年朝のドラマ『花子とアン』となって甦っている。感慨深い。


「心の堪え得る力」という表現をある詩人は使っているが、まったく、わたしたちの心は驚くべき弾力性に富んでいる。確かにときに応じて必要な力はわくものである。(本文より)