うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 乱紋 上・下

新装版 乱紋 (上) (文春文庫)

新装版 乱紋 (上) (文春文庫)

新装版 乱紋 (下) (文春文庫)

新装版 乱紋 (下) (文春文庫)

1979年出版だから、初読から31年もたっている。これほどまでに記憶というものが曖昧なものであるとは!
語り手である<おちか>も、重要なキーパーソンである<ちくぜん>のことも、物語に色を添えた<おたあ>のことも、まるっきりすっぽり、きれいに抜け落ちていた。
記憶の底に残っていたのは、お江(確か当時の文庫版では「お江与」と表記されていたはず)が、非常に寡黙であり、華やかな姉の影に隠れた地味な存在でありながら、じつに忍耐強く戦国時代を生き抜いた女性であったこと。。。それだけだ。
だから、あんなに共感し感動したお江の生き方が、今回はどうにも心に響いてこないので戸惑った。30年の年月って、人の感性も変えてしまうのかしら。語り手がいて、主人公がいて、さらにその上に作者の解説がある。三層構造の歴史物だったっていうのも、さらりと忘れていた。

「おごうの<ものがたり>を信じれば、おごうを勝気な明るい、わがままな人間に描くこともできたろうし、あるいは『若草物語』のメグに似せたり、三姉妹仲良し物語にしあげることも可能だが、私はそれを取らなかった」
永井路子さんの「あとがき」より〜

過日読んだ来年の大河ドラマ原作『お江』は、まさに↑のような物語だった。ふたつの作品の違いを読み比べながら、テレビドラマでも楽しめる。読書はこれだから、止められない。