うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

この世の春 上・下

この世の春 上

この世の春 上

この世の春 下

この世の春 下

乙女ティックな表紙にライトなイメージを持ちつつ読み始めたが・・・油断した(笑)
上巻では姿なき恐怖に怯え、下巻では人間の怨念の悍ましさに震え上がった。

それでも陰惨な復讐劇をハッピーエンドに誘ったのは、主人公を助け、見守る人々(心の中の子供も含む)の深い愛情の環だったのだ。

読後はホッとして、安堵の息を吐いた。
作家生活三十周年を飾るにふさわしい作品だったと思う。

ただひとつ。
事件(?)の発端となる動機が釈然としない。
藩政の不服だけで、人はそこまで復讐の鬼になりえるのだろうか。
なんの罪もない幼子を大勢犠牲にしてまで。
そして、彼らを操った本当の黒幕はいったい誰だったのだろうか。
対局にある人間の視点がほとんど描かれてないのでもやもや感は残る。