- 作者: 梨木香歩
- 出版社/メーカー: 文化出版局
- 発売日: 2010/12/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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梨木さんといえば、洗練された文章で読者を不思議世界にいざなってくれる名手であるが、それゆえ手の届かない天才肌の文学者というイメージをかってに抱いていた。
ところがこのエッセイにおいては、活発で行動的な少女時代のことや、カラスや犬との熱い友情を語るあたり、意外にも等身大の女性として身近に感じられ、思わず微笑まずにはいられなかった。
といっても、ご自身の感ずる思いを、さりげなくエピソードに絡め、言葉を操り、文章に織り上げていく様は、やはりさすがとしかいいようがないのだが。
☆
「笑い」というのはこんなにも人の顔を希望に満ちた、明るいものに変えるのか。<中略>そしてそれは期せずして、バラバラだった人々の心をそのとき一つにした。みなが笑い顔をなかなか止めなかったのは、その「一つになった」心地よさもあったからだろう。
『プラスチックの膜を破って』より抜粋