うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 困ってるひと

([お]9-1)困ってるひと (ポプラ文庫)

([お]9-1)困ってるひと (ポプラ文庫)

避けようのない運命の理不尽さに行き当たったとき、ひとはどのようにして生き延びていけるのだろう。
『難』を救済する立場から、『難』そのものの当事者となった筆者、渾身の闘病記・・・ではなく、生きるための覚悟を問い、社会のありかたを考え、読んだ人が自身の人生を違った視点でなぞらえるための指南書である。
病を得てからの体験談は読んでいて辛いが、悲壮感がほとんど感じられないのは、筆者の文章力によるものだろう。きっと本書に現れていないことの方がたくさんある。
絶望と不安、耐え難い痛み、友情の亀裂、信じていることのうらぎり。底なし沼でもがくような現実を、冷静に見据える強靭さ。
おそらく彼女は、自身を『取材、インタビュー』し、文章に立ち上げ『書く』という、第三者としての『わたし』を構築できる稀有な人なのだ。