うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 老い力

老い力

老い力

「今年は、自動車免許をとりにいきたいと思ってるの」と友人にいったら、「やめときないさいよ。あと何年、運転できると思ってるの?」といわれ愕然とした。友人の言葉にではなく、今まで人生を逆算して考えてなかった自分に驚いたのだ。

この本は、朝刊の読書欄に紹介されていた。往年の作家、佐藤愛子さんの50代から80代に渡る七冊のエッセイから再構成したものだ。
佐藤愛子さんによれば、50代の頃から老いや死について考え続けているという。人生逆算の達人である。
作家という職業柄、文章に表すための必然であっただろうが、『備えあれば憂いなし』。さすが超現実主義者と自認されていることはある。
年代別に構成されているエッセイは、ひとりの女性の自著伝とも読めるし、日本が歩んできた庶民が見た世相の変遷のようにも思える。

『桜は散り際よりも、静かに力いっぱい咲ききった盛りの姿に哀れがあると私は思う』

人生という長い坂を毅然と歩まれてきた佐藤さんの気概が伝わってくる一文だった。