うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 月夜のチャトラパトラ

月夜のチャトラパトラ (文学の扉)

月夜のチャトラパトラ (文学の扉)

「ぼくはその小さな人たちを、チャトラパトラとよぶことにしたんだよ」(扉文より)

図書館の新刊コーナー。表紙の絵が素敵だったので手に取りました。トルコのカッパドキアにある洞窟ホテルが舞台のファンタジー
ぶどうの実を煮詰めてできたペグメズ、複雑な模様の織物や民芸品、奇岩の乱立する森など、物語の世界にいつのまにか引き込まれていきます。なにより、小さなひとたち・・・チャトラパトラが、とても愛らしいのです。
トルコに半年間暮らしたという作者の体験と知識が、ファンタジーの要素を日常的なできごとの延長のように自然と身近に感じさせてくれます。
主人公の男の子、カヤは、赤ちゃんのとき洞窟で発見されました。そのカヤを育てたのがアナ、アタ夫婦。彼らは、カヤ少年と出会ったことで、洞窟ホテルを営むことになったのでした。旅行客も途絶える冬の季節、日本人で画家のヨーコ、金髪で背の高い青年ミッコが、宿の客として滞在することになります。そして、カヤたち五人は、一冊の本を巡り、じょじょに小さな人たちとの接点に近づいていきます。しかし、まだ大方の謎は残されたままなのです。続編があれば、と思いました。