うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

ふたつの月の物語

ふたつの月の物語

ふたつの月の物語

「美月と月明、名前に月を宿すふたりの少女が出会うとき、湖底に沈んだ大口真神の伝説がよみがえる」(帯より)
児童文学作家・富安陽子さんがついに児童文学の枠から飛び出した?
物語は双子の姉妹だが、影の主役は彼女たちを里子として迎えた津田さんではないかと思う。

ふたりの少女が引き取られた先は、大金持ちの屋敷。
広い子ども部屋、新しい洋服が詰まったクローゼット、目を見張るような豪華な食事、など、児童文学の王道を見せながらも、本格的なミステリーの要素(ダムに埋まってしまった村、謎の儀式、亡くなった息子の残したノート、隠された村長一家の末路など)もたっぷりと読ませてくれる。

物語の明確なテーマが、終章ではっきりと浮かび上がる。
少女視点で描かれているので、その他の人間関係の掘り下げが浅くなってしまったような気がした。視点を増やせば、もっと長い物語になりえる筆力を感じただけに実に惜しい。