うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 鹿の王 上・下

遅ればせながら、2014年国際アンデルセン賞受賞&作家デビュー25周年、おめでとうございます。『精霊の木』からの一読者(ファン)として素直にうれしいです。世界に日本の児童文学ファンタジーが初めて認められたという快挙に感無量です。心よりお喜び申し上げます。

本作は、国際アンデルセン受賞第一作と銘打った作品であり、新作を待ちわびていた私にとっては二重の歓びだった。
分厚い上下巻の外見に違わず、内容も心にずしりと響いた。ファンタジーという括りだけでは説明しきれないテーマの深淵さが半端でない。かといって、医学書哲学書のような難解さはなく、むしろ、ぐいぐいと物語世界に引き込まれていくストーリー性の高さを感じた。
リアリズムとファンタジーは本来、相反する分野だと思っていたが、上橋作品は版を重ねるごとに、この二つの境界線を曖昧にし、融合し、さらに昇華させているような気がする。

今回、まとまった時間がとれず、細切れで読み進むしかなかった。できれば、次回再読する際は、いっきに読んでしまいたいものだ。

「健やかなときは心が身体を動かしているような気がしているが、病めば、身体は、心など無視して動く。それを経験して初めて気づくのだ。身体と心は別ものなのだと」(本文より)