うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 十二国記シリーズ(講談社X文庫)小野不由美

『月の影 影の海上・下』
上巻の重苦しさが、下巻でいっきに解消する爽快さ。主人公・陽子の心の旅路。何度読んでも励まされ感動させられる。          
『風の海 迷宮の岸』
シリーズで初めて読んだのがこの巻。当時(十数年前)、『月の影・・・』を未読だったため、<麒麟>の意味がわからず、泰麒といっしょになって、どきどきしたことをおぼえている。 『東の海神 西の滄海』
十二国記シリーズで一番、古い時代が舞台。後にこの巻の重要人物が、『図南の翼』で姿を見せてくれたときは、すごくうれしかった。 『風の万里 黎明の空上・下』
三人の少女。それぞれ三つの物語が同時進行。やがて同じ思いが、ひとつにまとまっていく。陽子の王様ぶりがまぶしい。 『図南の翼』
シリーズ中、一番の元気キャラ。少女、珠晶。勇気と知恵に脱帽。主人公を支える脇役もすばらしい。『黄昏の岸 曉の天(そら)上・下』
李斎の視点で物語はほぼ進む。痛々しいまでの献身。作者はこの巻まで触れなかった<天>について、一歩踏み込む。『魔性の子』(新潮文庫)のその後。『華胥の幽夢』
シリーズ初の短編集。今回シリーズを最初から読み直してみて、改めてこの短編集の深みに気づかされた。
<冬栄>
泰麟は漣国を訪れる。小さな麒麟の苦悩とささやかな希望。
<乗月>
自らを謀反者と律する芳国の月渓に、慶国将軍、青辛は『月に乗じて暁を待つ』と説く。
タイトルの<乗月>の意味に胸が熱くなる。
<書簡>
登極してまもない陽子と大学の寮にいる楽俊の往復書簡。
人語をしゃべる青い鳥が、ふたりのメッセージを覚え、伝えるため行き来する。
高校生の陽子がいた日本は、1991年頃。
まだ携帯電話のない時代だった。発想としては<しゃべる書簡>といったところだが、2007年の現在から見れば、飛んでるく携帯>みたいな感じ?
<華胥>
これはもうファンタジーというより、上質なミステリー。
胥華朶の真の意味を知ったとき、初めて浮かび上がる犯人の姿。
『風の万里・・・』で、ちらっと姿を見せたあの王と麒麟に、
こんな悲しい過去があったなんて。驚いてしまった。
「責難は成事にあらず」。現代の政治にも通ずるものを感じる。
<帰山>
シリーズ中、とくに自由奔放なふたりの登場人物が、酒を飲み交わしながら語り合う、十二国の過去と未来。魔性の子』(新潮社)
十二国記の発端となった外伝。ホラー色が(個人的に)苦手なため、今回は回避。

☆『華胥の幽夢』から早や6年。続編が待ち遠しい。