うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

アルテミス・ファウル 北極の事件簿(文庫版)

2003年に刊行された単行本の文庫版。このシリーズ、日本語版単行本では、四巻まで刊行されている。シリーズ第一巻『妖精の身代金』は、すでに文庫化済み。
『北極の事件簿』の感想は、過去読書日記で書いたものと重複するので、当時の日記を下記にコピペした。
2003年11月の読書日記を改めて読むと、当時の評価は☆☆とあまり良くない。その後、着実に評価が上がっていったのは、現代イギリスファンタジーの本が、つぎつぎと和訳出版され、慣れ親しんでいったからだろうと思う。文庫版になっても、装丁・妖精文字はそのまま採用されているのがかなりうれしい。以下、過去の読書日記
□2003/11/14

アルテミス・ファウル―妖精の身代金

アルテミス・ファウル―妖精の身代金

アルテミス・ファウル〜妖精の身代金〜
文学の香りはしないが、さくさくと読めた。妖精とハイテクが共存する異色のファンタジー。辛口ユーモアにテンポのよい会話がおもしろい。主人公は犯罪一家の後継ぎ、12才の天才少年。コンピュターを屈指して謎を解読、ハイテクで固めた妖精社会を翻弄する。頭がよくて冷静かつ大胆。屈折した性格に、一番危ういのは素行だったりする。解説によれば、主人公の名前、ファウルは「卑劣な、きたない」という意味らしい。やってることが、誘拐だから、なっとくのネーミングだ。
翻訳物を読むときは、その国の歴史・風俗・慣習など、底辺にあるものが理解できてないので、憶測でしか読み取れない場面も多々あった。少し歯がゆく、残念だったりする。本を読むのにあわせて、わかりやすく解説してくれる原語解読装置みたいなものがあれば、すばらしいのに。このシリーズ、2巻が出てるらしい。そちらも予約したい。評価としては、フィクションとはいえ、子どもと犯罪は、やはり結びついて欲しくないので、二つ星にとどめておく。
□2003/11/15
アルテミス・ファウル―北極の事件簿

アルテミス・ファウル―北極の事件簿

アルテミス・ファウル〜北極の事件簿〜
13才になって寄宿学校に入ったアルテミス。父親を救うため、敵対していた妖精たちと手を組み、地上と地底で大活躍する。互いに反目しながらも、次第に相手の力量と本質を認め合っていくピープルとマッド・ピープル(地球環境を守ろうとする妖精と犯す人間の総称。妖精側のネーミング)。展開の早いストーリー。ハラハラドキドキのアクションと冒険。ひねりのきいたセリフが、緊迫した場面を和らげる。
それにしても、物語に登場する大人たち(妖精含む)が、とても魅力的だ。勇敢でチャーミングな捜査官ホリー、頑固だが部下思いのルート、やさしくて頼もしい従者バトラー、誇り高い皮肉屋フォーリー、ボケとツッコミのトラブル大尉とその弟。窃盗魔のマルチにいたっては、爆笑物だった。彼らは、アルテミスが13才だからといって、少しも手加減はしない。(過保護気味のバトラーは別だけど)本気で怒ったり、議論したりする。同じ目的を持つ仲間として、あくまでも対等に扱うのだ。頭脳だけで勝負していたアルテミスは、今回は体を張って(笑)がんばらざるを得なくなる。一巻では見られなかった、ときおり見せる子どもらしいすなおな一面が、ホッとさせてくれる。最後に、ドクターの質問に答えたアルテミスの返事も微笑ましかった。三巻が楽しみ。
□2006/10/03
アルテミス・ファウル―永遠の暗号

アルテミス・ファウル―永遠の暗号

アルテミス・ファウル〜永遠の暗号〜
前作から三年。これだけ年数が開くと、一巻と二巻の内容を、ほとんど忘れてしまっている。
読書日記をさかのぼって、おぼろげに思い出した。テクノ技術の発達した妖精世界と混沌とした人間世界。伝説的な犯罪一家に生まれた天才少年、アルテミス・ファウル13歳が主人公。(バーティミアスナサニエルといい勝負のひねくれ者)対する妖精世界の主役は、地底警察偵察隊のホリー・ショートというチャーミングなエルフ。
今回はアルテミスの開発したCキューブを巡って、IT通信業界大手社長・人間世界での悪漢ジョン・スピロと頭脳合戦が繰り広げられる。ファウルの召使、過保護気味のバトラーや、その妹、カンフー使いのジュリエット。LEPレコンの天才技術者、ケンタウロスのフォーリー。愛すべきドワーフ、マルチなど、脇役陣も健在だ。小説というより、脚本を読んでいるような感覚。スピーディでクールなエンタテイメント。皮肉とユーモアたっぷりのセリフが、小気味良い。
一巻で敵同士だったホリーたち妖精とアルテミスが、いつのまにか熱い友情と信頼(本人たちは、認めようとしないが)で結ばれている。二巻で救出されたファウルの父親も、いい人になってるし、アルテミスも少し、子供らしくなったか、というところで、物語は意外な展開へ・・・あれれ、最終巻じゃなかったの?
□2007/05/11
アルテミス・ファウル―オパールの策略

アルテミス・ファウル―オパールの策略

アルテミス・ファウルオパールの策略〜
全体に007シリーズのファンタジー版といった感じ。妖精の使用するアイテムの描写がとてもリアル。主要人物の一人がたいへんなことになって、物語も四巻にきて、状況が大きく変化していきそうだ。スピーディな展開と歯切れの良い会話はいつも通り。ユーモアのセンスと皮肉のスパイス満載。それにしても、14歳になったアルテミスは、本当に良い子になった(笑)まるで脚本を読んでいるようだと思っていたら、近く映画化される予定だそうだ。
いつか本に描かれている妖精文字を解読したい。映画化の折には文庫化を望みます。(←注:文庫化は07年7月に実現)