うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 遠く不思議な夏

遠く不思議な夏

遠く不思議な夏

昭和三十年代を舞台に綴る12の奇譚「母の郷里で過ごした、少年時代の夏休み。そのなんでもない田舎暮らしの中でぼくはまぼろしとも現実ともつかない不思議な出来事に出会う」(帯文より)
主人公のぼくが十二歳になるまでの不思議な出会い。何でも屋の謎の人物<きっつあん>もさることながら、おもしろい話を考えついては物語ってくれる主人公の祖父も良かった。
そうそう、昔の冷蔵庫といったら、アイスクリームを保存できなかったのだ。アイスクリームはお店で買ったら、とけないうちに家にもどり、あわてて食べなければならないものだった。
なんて、記憶の戸棚に置き去りにされていた昭和の思い出が、手の平にほろほろとこぼれ落ちてくる。
主人公の家庭の事情を「異母兄」のひとことで表現したり、いかにも斉藤洋さん、といったクールな手法で読ませてくれる。
イラストの森田みちよさんが、昭和時代のノスタルジーを思う存分描かれていて秀逸だった。