うたたね日和♪読書メモ

本との出会い徒然に

 『赤毛のアン』のこと

「あなたは、本を読むのが好きだから」
従妹たちが12歳の誕生日にプレゼントしてくれたのは、『赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』の三冊の本だった。
当時、世界文学全集を愛読していた私は、アブダラと世界中の海を旅したり、小公女や小公子と不遇を分かち乗り越えたり、秘密の花園を散歩していたりした。それは刺激的で冒険心と勇気にみちており、最後は必ず大団円に終わるのだった。

赤毛のアン』はまず題名で躓いた。『赤毛』という言葉にジュール・ルナールの『にんじん』を想像してしまったのだ。もしこれが原題のまま『グリーン・ゲイブルスのアン』もしくは『緑の切妻屋根のアン』であれば、すぐにでも手に取って読んでいただろう。三冊の本は開かれず、そのまま本棚の隅で眠ることになる。
それから3年の月日が流れた。わたしは中学三年生になっていた。たまたま学校の図書室で借りたい本がなくなってしまったとき(興味のある本は手当り次第に読んでいたので)、なにか飢えたように家の本棚に眠っていたこの三冊を見つけたのだった。
薄紫の箱から白い本が現れたとき、心が躍るようなうれしい出会いの予感がした。ページを開いた最初の装画は、大きな目にとがったあごの利発そうな少女、アンの姿だった。各章のタイトルには、かわいいイラストが描かれていた。本のしおりは化粧箱と同じ薄紫色をしていた。アンの好きな色だ。


アンの年齢と自分の年齢がシンクロした。アンとともにグリーンゲイブルスの日常を楽しみ、笑い、悲しみ、絶望から再生することを経験した。なにより受験生であったので、アンの努力と楽天性は、わたしの励みになった。その後、学生時代を経て、社会人、結婚、子育て、介護・・・現在に至るまで。人生の曲がり角にたたずむたび、アンは傍らで寄り添ってくれている気がする。私の大切な腹心の友なのだ。



赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』までが薄紫色の化粧箱入り。『赤毛のアン』(村岡花子・訳)は、昭和42年8刷となっている。
4巻からは表紙カバーのみとなる。3巻までは誕生日プレゼントとして従妹たちから贈られたもの。
4巻からは、自分のお小遣いで購入したものである