かわいらしい表紙絵とタイトル。中学年から読めるほのぼの系読み物と思いきや、とんでもなくハードな内容の本だった。
<以下、ネタバレ>
一見和やかに見える学校生活の前半。
主人公の創作する物語・本の物語・現実・過去のエピソードを交え、
四つの世界がバランスよく組み合わさって進行する。
よくあるいじめの話?と思いきや。。。
中盤から後半。
親友の父親が登場した当たりから、一気に不穏な空気が流れ出す。
どうしようもない閉塞感と憤りにとらわれることになる。
テーマは児童虐待。言葉のDVだった。
主人公が親友の命を救う場面は不覚にも涙が出てしまう。
読後感は良い。希望を持てる終わり方だった。
でも現実はこうはいかない場合方が多いだろう。
そう思うと切ない。
大人がしっかりしなくちゃ、と思わされた本だった。
本作は『赤ずきんちゃん』がベースであるから、オオカミは「わざわい」の象徴とされている。しかし、本当に怖いのは「人間」の方であることを忘れてはならない。
行間から作者の思いがあふれている。
物語が言葉を紡がせている。
読者を引き込む勢いがある。
作者は29歳でこの作品を執筆されたという。
言わずもがなである。